たまに聞かれる。

「期間工って、やっぱりきついですか?」

そのたびに少し困る。

きつい。

でも、何がきついのかを一言で説明するのは難しい。

工場の仕事そのものが、人生で一番きつかったわけではない。引っ越し屋や飲食店の方が、体力的にはきついと感じたこともあった。

それでも期間工には、別のつらさがある。

同じ動きを何度も繰り返すこと。

昼と夜が入れ替わること。

眠らなければいけない時間に眠れないこと。

昨日まで一緒にいた同期が、突然いなくなること。

結論から言うと、自分の場合、作業には約4週間で慣れた。

ただし、

夜勤の生活だけは最後まで慣れなかった。


肉体的にきついこと

工場に着く。

カードを通す。

ロッカーまで歩く。

作業場まで、また歩く。

工場勤務をしたことがない人には想像しにくいかもしれないが、工場の敷地は広い。配属先によっては、出勤して作業を始める前からかなり歩く。

朝礼とラジオ体操が終わる。

ラインが動き始める。

部品を取る。

工具を使う。

確認する。

次の製品が来る。

また同じ作業をする。

期間工の肉体的なきつさは、一回の動作がものすごく重いことだけではない。同じ姿勢と同じ動きを、勤務時間中に何百回、何千回と繰り返すことにある。

最初の頃は、時計ばかり見ていた。

8時12分。

次に見た時は、

8時17分。

5分しか経っていない。

ラインは止まらない。

部品は流れてくる。

また来る。

また来る。

また来る。

時間ではなく、回数で一日を感じる仕事だった。

特にきつかったのは、手首、肩、腰、足など、同じ場所へ負担が集中することだった。作業中は動けていても、寮へ帰ってから痛みや重さを感じる日もある。

ただ、肉体的なきつさは、ある程度までなら慣れる。

最初は意識しなければできなかった動きも、繰り返しているうちに体が覚える。無駄な力が抜け、工具の持ち方や立ち位置も分かってくる。

楽な仕事になるわけではない。

同じ仕事を、以前より少ない力でできるようになるだけだった。

夜勤でつらかったこと

夜勤の日。

自分は夕方4時頃に起きていた。

スマホを見る。

友人からのメッセージ。

家族のグループチャット。

どれも数時間前の話題だった。

世間は一日を終えようとしている。

でも、自分の一日はこれから始まる。

この時点で、少しだけ孤独になる。

作業着に着替えて寮を出ると、夕焼けが見える。仕事を終えた人が家へ帰る時間に、自分は工場へ向かう。

夜勤のつらさは、眠い時間に働くことだけではなかった。

生活の時間が、世間と反対になることだった。

夜勤が終わるのは朝。

工場の門を出ると、空が明るくなっている。

これから仕事へ向かう人たちとすれ違いながら、自分は寮へ帰る。

コンビニへ寄る。

缶コーヒーとパンを買う。

寮へ戻り、シャワーを浴びる。

ベッドに入る。

ここからが本番だった。

眠れない。

外は明るい。

隣の部屋のドアが閉まる。

掃除機の音がする。

宅配便が来る。

外から子どもの声が聞こえる。

眠らなければいけない。

でも眠れない。

時計を見る。

昼の12時。

出勤は夕方5時。

早く眠らないと、また夜勤が始まる。

焦る。

焦るほど、余計に眠れない。

工場の作業は、続けていればある程度慣れた。

夜勤明けに昼間眠る生活だけは、最後まで簡単にならなかった。


精神的にきついこと

期間工の精神的なきつさは、仕事中に怒られることだけではない。

終わりの見えない反復と、人が突然いなくなることだった。

最初の頃は、時計を見るたびに絶望した。

まだこれだけしか時間が経っていない。

この作業を、あと何時間続けるのか。

そう考えるほど、一日が長くなる。

慣れてからは、時計をあまり見なくなった。見てもラインの速さは変わらず、部品が止まるわけでもないと分かったからだ。

もう一つ、地味にきつかったのが同期の退職だった。

昨日まで隣のロッカーを使っていた人が、ある日いなくなる。

理由は知らない。

聞かない。

聞けない。

ただ、ロッカーから荷物だけが消えている。

同じ時期に入社した人がいると、最初は少し安心する。自分だけが作業についていけないわけではないと分かるからだ。

その人が先に辞めると、自分だけ取り残されたような感覚になる。

次は自分かもしれない。

このまま続けて大丈夫なのか。

そんなことを考える。

期間工には契約期間がある。

更新する人もいる。

正社員になる人もいる。

満了して出ていく人もいる。

途中で突然来なくなる人もいる。

みんな通過していく。

だから、最初から深く関わろうとしない人もいた。

ここは学校ではない。

工場だった。

慣れるまで何週間かかったか

自分の場合、作業に慣れるまで約4週間かかった。

最初の頃は、作業手順を考えながら体を動かしていた。

次はどの部品か。

工具をどこへ当てるか。

確認する場所はどこか。

一つ考えている間にも、次の製品が流れてくる。

焦る。

手順が遅れる。

さらに焦る。

最初の数週間は、仕事を終えるだけでかなり疲れていた。寮へ帰って食事をすると、ほかに何もする気が起きない日もあった。

それが一か月ほど経つと、同じ場所に立ち、同じ工具を持っているのに、少し楽になっていた。

体が作業を覚え始めたからだ。

何も考えなくても手が動く。

次の部品を取るタイミングが分かる。

どこで力を抜けばいいのかも見えてくる。

期間工を始めて数日で「自分には無理だ」と思う人は多いと思う。

自分も最初はそうだった。

ただ、最初のつらさがそのままずっと続くとは限らない。

少なくとも自分は、約4週間で作業の感じ方が変わった。

一方で、夜勤の睡眠や生活リズムは、作業とは別だった。仕事に慣れても、昼間に眠れないつらさは残った。

「作業へ慣れること」と「期間工生活へ慣れること」は、同じではなかった。

きつさが変わる配属工程

期間工がきついかどうかは、会社名だけでは決まらない。

配属される工程によって、負担はかなり変わる。

同じ工場でも、重い部品を扱う工程もあれば、細かい確認を繰り返す工程もある。ほとんど同じ場所に立ち続ける仕事もあれば、作業場を歩き回る仕事もある。

きつさが変わる主な要素は、次のようなものだった。

重いものを繰り返し扱う工程

一回なら持てる重さでも、勤務時間中に何度も持ち上げると負担が蓄積する。

腕、肩、腰へ負担が集中しやすい。

中腰や上向きの姿勢が続く工程

部品の重さより、姿勢がきつい場合もある。

中腰、しゃがむ動作、腕を上げ続ける作業などは、時間が経つほど体へ効いてくる。

ラインの速度が速い工程

一つの作業が難しくなくても、次の製品がすぐに来れば余裕がない。

少し遅れるだけで焦りやすく、精神的な負担も大きくなる。

歩く距離が長い工程

同じ場所に立つ仕事とは違い、足への負担が増える。

作業そのものより、一日の歩数で疲れることもある。

細かい確認が必要な工程

体力的には軽く見えても、見落としが許されない仕事は集中力を使う。

夜勤中に眠気が強くなると、精神的な疲れも大きくなる。

「期間工は楽だった」という人と、「二度とやりたくない」という人がいるのは、体力や性格だけの違いではない。

配属工程の違いも大きい。

同じメーカーへ入っても、全員が同じきつさを経験するわけではなかった。


向いている人・やめた方がいい人

期間工は、全員におすすめできる仕事ではない。

ただ、今の生活を立て直したい人にとっては、現実的な選択肢になることもある。

期間工に向いている人

同じ作業を繰り返すことが、それほど苦にならない人。

分からないことを素直に聞ける人。

最初の数週間がきつくても、すぐに結論を出さず続けられる人。

交替勤務に合わせて、睡眠や食事を調整できる人。

寮生活や集団生活に、ある程度対応できる人。

そして、何のために期間工へ行くのかを決めている人。

借金を返す。

100万円貯める。

満了金まで働く。

次の仕事の準備をする。

目的があると、きつい日に踏ん張りやすい。

自分が続けられた理由も、結局は金だった。

寮がある。

借金を返せる。

貯金を作れる。

生活を立て直せる。

そこが明確だった。

期間工をやめた方がいい人

夜勤や生活リズムの変化で、体調を大きく崩しやすい人。

腰、膝、肩などに強い不安がある人。

同じ作業を繰り返すことへ、強い苦痛を感じる人。

共同生活や寮の環境に耐えられない人。

「楽に高収入を得られる仕事」だと思っている人。

期間工は、求人広告に書かれた給料だけを見れば魅力的に見える。

ただ、その金額の中には、夜勤、残業、反復作業、寮生活といった条件が含まれている。

高い給料だけを期待して入ると、想像との違いに苦しむ可能性がある。

体や睡眠に異変が出ているのに、金のためだけに無理を続けるのも危険だ。

期間工を始めることより、

続けるために体を壊す方が怖い。

期間工はきつい。でも、きつさは一つではない

期間工はきつい。

ただし、きつさの正体は人によって違う。

重い部品がつらい人もいる。

ラインの速さがつらい人もいる。

夜勤がつらい人もいる。

寮生活や人間関係がつらい人もいる。

自分の場合、肉体的な作業には約4週間で慣れた。

精神的な反復にも、少しずつ慣れた。

でも、

夜勤の生活だけは最後まで慣れなかった。

それでも続けた。

借金を返し、貯金を作り、生活を立て直すという目的があったからだ。

もし今の生活に行き詰まっているなら、期間工は悪い選択ではないと思う。

ただし、楽に稼げる仕事ではない。

何がきついのか。

そのきつさを、自分が受け入れられるのか。

求人票の金額だけではなく、そこまで考えてから応募した方がいい。

朝6時。

夜勤を終えて工場の門を出る。

世間はこれから仕事へ向かう。

自分は寮へ帰る。

あの景色を何度も見ながら、

この仕事を続けられるか考えていた。

期間工に向いているかどうかは、

給料だけでは決まらない。

あの生活を続ける理由を、

自分の中に持てるかどうかだと思う。

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