体験記ブログを始めた頃期間工7社経験
ブログを始めてもアクセスがゼロだった夜のイラスト
最初に試されていたのは、読まれるより前に、自分が書き続けられるかどうかだった。

記事を公開した。画面には「公開済み」と表示されていた。これで誰かが読みに来る。少しだけ、そう思っていた。期間工へ応募した日のこと。初めて寮へ入った日のこと。夜勤明けに見た朝日のこと。自分なりに時間をかけて書いた。文章がうまいとは思わない。それでも、自分にしか書けないことを書いたつもりだった。

0公開直後のアクセス
1少しして表示されたアクセス(自分)
0円収益

誰か一人くらい来ると思っていた

ブログを始める前、ブログで月1万円、半年で月5万円、会社を辞めて独立、そんな言葉が並ぶ記事をたくさん読んだ。記事を一つ書いただけで稼げるとは思っていなかった。でも、誰か一人くらいは来ると思っていた。インターネットに公開したのだから、世界中の誰かが偶然見つける。そんな簡単なものだと思っていた。実際には、誰も来なかった。

少しして、アクセス数が1になった。思わず画面を見直した。でも、すぐに気づいた。表示崩れはないか、誤字はないか、画像は出ているか。確認のためにスマホから何度も開いていた、そのアクセスだった。初めての読者は、自分だった。

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工場なら結果がすぐに見える

工場と配達

作業をすれば、目の前の製品が先へ流れていく。料理を届ければ、報酬が表示される。働いた結果が、その日のうちに見える。

ブログ

二時間かけて記事を書く。公開する。何も起きない。アクセス0、収益0円、反応もない。昨日と何も変わっていなかった。

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この記事に意味はあるのか

夜勤明け、寮でアクセス解析を見る。0。自分の記事を読み返すと、急に全部が恥ずかしく見えた。知らない期間工が寮へ入った話。夜勤で眠れなかった話。口座残高を見て不安になった話。書いている本人には大事なことでも、他人には関係がない。改行が多い。同じ言葉を何度も使っている。全部消そうかと思った。

検索すれば、メーカーごとの給料、満了金、寮の設備、面接対策が表や写真つきで整理されたサイトがいくらでも出てきた。配達も、一日に何万円稼いだ人が数字を出して説明している。期間工で成功したわけでも、配達で大きく稼いだわけでもなく、借金も残っている。そんな人間が何を書けばいいのか、分からなくなった。

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それでも記事を書く理由

パソコンを閉じようとしたとき、最初の記事「応募ボタンを押すまで30分かかった」をもう一度開いた。期間工へ戻るか迷っていたときの話。また工場へ戻ることへの恥ずかしさ、お金がない現実、捨てられなかったプライド。うまい文章ではなかった。でも、あの日の自分が何を考えていたのかは残っていた。記事を書かなければ、迷っていた30分のことは消えていたと思う。

ブログは、誰かに読んでもらうためだけのものではない。少なくとも最初は、自分が生きた時間を残す場所でもいい。そう思うことにした。

最初の記事 応募ボタンを押すまで30分かかった

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二本目の記事と、一行だけの日

二本目のタイトルは「初めて寮のドアを開けた日」。鍵を受け取ったとき、長い廊下、古い部屋の匂い、ボストンバッグ一つで入寮したこと。SEOという言葉もよく分かっていなかった。調べるとやるべきことが大量に出てきて、全部を理解してから書こうとすると一文字も進まない。だから、まずは書くことにした。

ブログを書く時間は、最初から用意されているわけではなかった。工場から帰り、食事をして、風呂に入る。配達へ行った日はさらに遅くなる。パソコンを開く気になれない日は、一行だけ書いた。「工場の門を出た。今日は雨だった」。それだけの日もあった。

工場では、一台ずつ製品を流していた。ブログも同じように考えた。一日に全部作る必要はない。一行ずつでも、昨日より先へ進めばいい。

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数字を見るのをやめられなかった

そう決めても、朝起きて、休憩中に、仕事が終わって、アクセス解析を何度も開いた。0。たまに1。また自分かもしれない。アクセスが増えないことより、増えるかもしれないと期待している自分が嫌だった。数字を気にしない、好きなことを書く、と言えるほどきれいな気持ちではなかった。記録として残したい。でもお金にもしたい。その二つの間で揺れていた。

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初めて読者らしいアクセスが来た

何日か経った夜、アクセス解析に1と表示されていた。その日は記事を開いていなかった。検索ではなく、どこから来たのかもはっきりしない。滞在時間も短く、間違えて開いただけかもしれない。それでも、自分以外の誰かが来た可能性があった。たった一件。それでも、アクセス0とは全く違って見えた。

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一人に向けて書く

多くの人に読まれる記事を書こうとすると、何を書けばいいのか分からなくなる。だから、一人を想像することにした。

想像した
読者

夜勤明け。コンビニの駐車場。缶コーヒーを飲みながら、スマホで「期間工 きつい」と検索している人。応募するか迷っている。今の仕事を辞めたい。お金も貯めたい。でも失敗するのが怖い。

過去の自分に近い人だった。期間工は楽だとは言わない。誰でも貯金できるとも言わない。自分が見たもの、失敗したこと、不安だったことを正直に書く。一人に届けば、最初はそれでいい。

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ゼロでも残っていたもの

その後も、急にアクセスが増えたわけではない。収益は0円で、サーバー代とドメイン代を考えれば赤字だった。配達へ行けばその日のうちに数千円になるのに、ブログへ使った二時間は何円にもならない。実際に、パソコンを閉じて配達へ出た日もある。それでも、帰ってから少しだけ書いた。

工場の仕事は、一日が終われば翌日に持ち越せない。配達も、一件終わればそこで完了する。ブログの記事は、公開した次の日も残っている。誰にも読まれていなくても、消えずにそこにある。今日書いた文章が、いつか誰かに見つかるかもしれない。その可能性だけは残っていた。

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深夜2時の更新

夜勤を終え、短い配達を終えて、寮へ戻る前にコンビニの駐車場でスマホを開いた。アクセス解析は0。もう驚かなかった。下書きを開いて、思いついた一文を入力する。「同期が辞めた朝、隣のロッカーは空になっていた」。保存して、スマホを閉じる。明日、続きを書けばいい。

アクセスはゼロ。収益もゼロ。それでも、ゼロの中に一記事だけ残った。その一記事が、次の記事につながった。誰かに読まれるより前に、まず自分が書き続けられるかどうか。最初に試されていたのは、たぶんそこだった。

体験記の続き 初めて一円が発生した夜 ブログを始めた理由 このままで終わりたくなかった


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