契約更新の書類を出した後、

少しだけ安心した。


これでしばらくは給料が入る。

寮にもいられる。

仕事も続く。


明日から急に生活が崩れることはない。


そう思うと、

肩の力が少し抜けた。


でも、

その安心は長く続かなかった。


更新した帰り道、

ふと考えた。


このまま半年経ったら、

自分はどうなっているんだろう。

生活は安定した

更新してからも、

毎日は変わらなかった。


目覚ましで起きる。

作業着に着替える。

工場へ行く。

ラインに立つ。


仕事が終われば、

寮へ戻る。


余裕があれば配達する。

眠ければそのまま寝る。


休みの日には、

洗濯をして、

買い出しへ行って、

ブログを少し書く。


悪い生活ではなかった。


少なくとも、

給料日前に残高3,842円を見ていた頃よりは、

ずっと安定していた。


借金も少しずつ減っていた。

貯金も増えていた。


だから、

他人から見れば順調だったと思う。


でも、

自分の中には別の不安があった。

半年後の自分

次の満了まで、

あと半年。


半年あれば、

金は増える。

借金も減る。


ブログの記事も増やせる。

配達収入も積み上げられる。


そう思っていた。


でも、

同時にこうも思った。


半年後、

また同じことを言っているんじゃないか。


「もう少し貯めてから」

「次の満了金まで」

「あと半年だけ」


そう言いながら、

また契約更新の紙を前に迷っている自分が見えた。


その未来が、

やけに現実的だった。

期間工ループ

期間工を辞める。


少し休む。

貯金を使う。


生活費が減る。

焦る。

求人を見る。


また期間工へ応募する。


寮に入る。

工場へ行く。

夜勤をする。


また金を貯める。


そして、

また辞めるか続けるかで迷う。


これを、

自分の中で期間工ループと呼んでいた。


誰かに言われたわけではない。


でも、

何度も似たような道を通るうちに、

そう感じるようになった。


期間工は助かる。


本当に助かる。


金が必要な時。

住む場所が必要な時。

経歴に自信がない時。


働く場所をくれる。


でも、

そこから次へ進む準備をしなければ、

また戻ってくることになる。


それが怖かった。

期間工が悪いわけではない

誤解したくない。


期間工という働き方が悪いわけではない。


自分は何度も助けられた。


寮があった。

給料が入った。

満了金もあった。


借金を返すきっかけにもなった。


貯金100万円を作れたのも、

期間工だったからだと思う。


もしあの時、

期間工へ戻っていなければ、

もっと苦しくなっていたかもしれない。


だから、

この仕事を否定する気はない。


ただ、

自分がずっとここにいる未来を考えると、

少し息苦しかった。


助けられることと、

そこから出られなくなることは、

紙一重なのかもしれない。

工場に慣れていく怖さ

最初の頃は、

工場に行くだけで緊張した。


ラインの速さ。

工具の扱い。

人間関係。

夜勤。

寮生活。


全部がしんどかった。


でも、

続けていると慣れる。


何時に起きれば間に合うか分かる。

どの休憩で何を食べればいいか分かる。

作業のコツも覚える。


班の空気も読めるようになる。


慣れることは悪くない。


仕事が楽になる。

怒られることも減る。

体も動くようになる。


でも、

慣れすぎると、

出るのが怖くなる。


外へ出れば、

また一から始めなければいけない。


面接。

新しい職場。

新しい人間関係。

新しい失敗。


それを考えると、

今の場所に残った方が楽に見える。


その楽さが怖かった。

外の世界の方が怖かった

期間工の仕事はきつい。


でも、

何をすればいいかは分かる。


出勤する。

作業する。

退勤する。

給料が入る。


分かりやすい。


一方で、

工場の外は分かりにくかった。


転職活動。

資格。

副業。

ブログ。

投資。


何を選べばいいのか。

どれくらい続ければ結果が出るのか。

失敗したらどうなるのか。


答えがなかった。


だから、

工場の中にいる方が安心できた。


きついけれど、

分かりやすい。


外は自由だけど、

分からない。


自分が本当に怖かったのは、

工場の仕事ではなく、

工場の外で何者でもない自分になることだった。

ブログも逃げ道ではなかった

ブログを始めた。


記事も少しずつ増えた。


初めて一円も発生した。


でも、

ブログがあるから大丈夫とは言えなかった。


収益はまだ小さい。


アクセスも安定していない。


生活を支えられるようなものではない。


配達も同じだった。


走れば稼げる。


でも、

休めば止まる。


工場以外の収入源はできた。


でも、

工場を辞めても大丈夫と言えるほどではなかった。


だから、

期間工ループから抜け出すには、

ただ副業を始めるだけでは足りないと思った。


続ける仕組みが必要だった。


金を残す仕組み。

記事を書く仕組み。

配達を無理なく続ける仕組み。

次の仕事を探す仕組み。


気合いだけでは、

また同じ場所へ戻る。

何も考えなければ戻る

一番怖かったのは、

自分が特別に失敗することではなかった。


何も考えなければ、

自然に戻ってしまう気がしたことだった。


期間工は応募しやすい。


経験もある。


採用される可能性もある。


寮もある。


だから、

困った時の選択肢として強すぎる。


金がなくなる。

仕事が決まらない。

家賃がきつい。


そうなった時、

また期間工の求人を見る未来が簡単に想像できた。


人間は、

一度通った道へ戻りやすい。


知らない道より、

知っているきつさを選びやすい。


自分もたぶんそうだった。


だからこそ、

次に進むなら、

意識して違う道を作らないといけない。

ループを抜ける条件

ノートを開いた。


契約更新の時にも使ったノートだった。


「また戻らないために必要なもの」

と書いた。


最初に出てきたのは、

やっぱり金だった。


生活防衛資金。

引っ越し費用。

税金。

保険。


貯金がなければ、

選択肢は一気に狭くなる。


次に、

収入源。


工場以外で月に少しでも入る金。


配達。

ブログ。

将来的には別の仕事。


そして、

時間。


満了してから考えるのでは遅い。


契約中に準備しなければいけない。


最後に、

目的。


何のために出るのか。


ただ期間工が嫌だから出るのか。


それとも、

次の働き方を作るために出るのか。


ここが曖昧なままだと、

たぶんまた戻る。

目標を数字にした

曖昧なままだと、

何も変わらない。


だから、

数字にした。


次の満了までに、

貯金をいくらまで増やす。


借金をいくらまで減らす。


ブログの記事を何本まで書く。


配達収入を毎月記録する。


転職サイトを見るだけでなく、

応募候補をいくつか残す。


完璧な計画ではなかった。


でも、

何も決めずに更新した前回とは違った。


数字にすると、

逃げにくくなる。


できなかった時も、

何が足りなかったのか分かる。


期間工ループから抜けるには、

気持ちより先に、

仕組みを作る必要があった。

それでも戻るかもしれない

正直に言えば、

また期間工に戻る可能性はある。


人生は予定どおりにはいかない。


仕事が決まらないかもしれない。


ブログも伸びないかもしれない。


配達で体を壊すかもしれない。


貯金を使い切るかもしれない。


その時、

また期間工へ応募するかもしれない。


でも、

それを完全な失敗だとは思わないようにした。


戻ること自体が悪いのではない。


何も積み上げずに戻ることが怖いのだと思う。


次に戻るとしても、

前より貯金がある。

前より記事がある。

前より副業の記録がある。

前より自分のことが分かっている。


そういう戻り方なら、

少しは違う。

深夜2時の帰り道

その日の仕事終わり。


工場の門を出た。


空気は冷たかった。


配達アプリを開くか迷った。


でも、

その日は寮へまっすぐ帰った。


ノートを開く。


期間工ループ。


そう書いた。


その下に、

抜けるために必要なものを書いた。


金。

収入源。

時間。

目的。


どれも、

すぐには手に入らない。


でも、

見えたなら準備できる。


また期間工に戻る未来が見えた。


怖かった。


でも、

見えないまま流されるよりはよかった。


自分が戻りやすい場所を知っているなら、

そこへ戻らないための道も作れるはずだ。


次の満了まで、

ただ働くだけでは終わらせない。


そう決めた夜だった。



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