この記事は個人の体験をもとにしています。手や指に痛みがある場合は、自己判断だけで済ませず医療機関へ相談してください。
期間工をしていたとき、腱鞘炎になって箸が使えなくなったことがある。
指に力を入れると痛い。箸を開いたり閉じたりする動きもうまくできない。
食堂で箸を使うのがきつかったので、毎日のようにカレーを食べていた。カレーならスプーンで食べられるからだ。
「本当にカレー好きだね」
違う。
カレーが好きで毎日食べていたわけではない。箸が使えなかっただけだ。
手が痛くなると、工場の仕事だけではなく、生活全体が不便になる。
この記事では、期間工で腱鞘炎になった自分の経験をもとに、どんな作業で手へ負担がかかりやすいのか、どの段階で相談したほうがいいのかをまとめる。
小さな痛みのうちに言ったほうがいい
自分は、次のように考えて、そのまま作業を続けた。
- 少し痛いだけだから
- そのうち手が慣れるだろう
- 忙しいのに工程を止めたくない
その結果、箸を使う動作まできつくなった。今振り返ると、もっと早い段階で職場へ伝えるべきだったと思う。
入社直後ほど言いにくい
配属されたばかりで作業も遅い。周りは普通に動いている。自分だけ弱音を吐いているように感じる。
でも、痛みを隠して悪化させるほうが、結果的に仕事へ影響する。手を使う仕事では、完全に使えなくなるまで我慢しても誰も得をしない。
なぜ期間工の仕事で手を痛めやすいのか
期間工の仕事は、重い物を一度だけ持つ仕事より、同じ動作を何度も繰り返す仕事が多い。
つまむ
部品を指でつまむ、小型部品を検査する。
握る
電動工具を握る、ボルトを締める。
押す・引く
部品を押し込む、レバーを引く。
ひねる
手首をひねる、製品の向きを変える。
1回の動作だけを見れば、それほど重くない。しかし、同じ動きを1日に何百回、何千回と繰り返す。
厚生労働省も、上肢の反復動作が多い作業、特定の部位へ負担がかかる作業、過度な作業ペースなどを、上肢障害につながる作業要因として挙げている。腱炎や腱鞘炎も、業務による上肢障害の代表例に含まれている。
期間工では、ラインが動いている限り、手を完全に休ませることは難しい。少し痛くても、次の部品が来れば手を動かす。それを繰り返すうちに、朝だけだった痛みが勤務中も続くようになり、仕事以外の動作までつらくなることがある。
期間工で負担が出やすい作業
電動工具を繰り返し使う作業
インパクトレンチや電動ドライバーを使う工程では、工具を握り続ける。締め付け時の反動や振動もあり、指・親指・手首・前腕へ負担が集中しやすい。
小さな部品をつまむ作業
親指と人差し指を高速で繰り返し使う。部品が軽くても、つまむ動作を続ければ指は休めない。
部品を押し込む作業
部品をはめ込む、押す、固定する工程では、毎回同じ方向へ力を入れる。力で何とかしようとすると、手首や親指へ負担が集まりやすい。
手首をひねる作業
部品の向きを変える、レバーを回す、容器を開閉するなど、手首をひねる動作も繰り返しになりやすい。
ライン速度に追われる作業
ラインに追われると、手首の角度や力の入れ方を気にする余裕がなくなる。長時間作業、連続作業、過度な作業ペース、強い力の発揮も上肢への負担を評価するときの要素になる。
こんな症状が出たら、早めに相談したほうがいい
腱鞘炎の症状は、痛む場所によって少し違う。ただ、次のような変化があるなら、そのまま我慢しないほうがいい。
- 指や手首を動かすと痛い
- 指の付け根が腫れている
- 押すと痛い、熱を持っている感じがする
- 朝に指が動かしにくい
- 曲げ伸ばしすると引っ掛かる
- 物をつまみにくい、工具を握れない
- 箸やペットボトルの操作が難しい
箸やボタンなど、日常生活の動作にまで影響が出ているなら、「まだ仕事はできるから大丈夫」で済ませないほうがいい。
痛みの原因が必ず腱鞘炎とは限らないため、整形外科などで確認してもらうことも大切だ。
痛みが出たとき、職場へどう伝えるか
期間工だと、職場へ痛みを伝えにくい。特に入社直後は、次のように考えてしまう。
- 仕事ができないと思われそう
- 契約更新に影響しそう
- 別の工程へ回されたくない
それでも、悪化する前に伝えたほうがいい。
伝え方の例
右手の親指の付け根が痛みます。
工具を握ったときに強く痛みます。
昨日より痛みが強くなっています。
仕事以外でも箸を持つのが難しくなっています。
痛む場所、痛む動作、いつからか、悪化しているかを伝えると分かりやすい。相談先は職場によって違うが、まず班長や上司へ伝え、必要に応じて保健室、健康管理室、産業医などへ相談する流れになる。
「我慢できるか」ではなく、同じ作業を続けて悪化しそうかで考えたほうがいい。
病院ではどんな治療をするのか
治療内容は、痛む場所や症状の程度によって変わる。
患部を休ませる
負担のかかる動作を減らし、手や指を休ませる。
装具などで固定する
症状に応じて、患部を動かしにくくする。
薬・注射
薬を使う、腱鞘内へステロイド注射を行う場合がある。
手術
改善しない場合や再発を繰り返す場合に検討されることがある。
自己判断で市販薬だけを使い、同じ作業を続ければいいという話ではない。薬で痛みを感じにくくなっても、負担の原因が残っていれば、また痛む可能性がある。
自分の症状に合った対応は医師へ確認し、仕事をどうするかも職場と相談したほうがいい。
期間工で腱鞘炎になったら労災になる?
仕事中に手を痛めたからといって、自動的に労災と認められるわけではない。
一方で、腱炎や腱鞘炎は、厚生労働省が示す業務による上肢障害の対象に含まれている。
個別判断で見られる主な点
- 上肢へ負担がかかる作業へ従事していたか
- 業務量や作業ペースが過重だったか
- 作業と発症までの経過が医学的に妥当か
- 仕事以外の要因がないか
記録しておきたいこと
- いつ痛み始めたか
- どんな作業をしていたか
- 1日に何時間程度その作業をしていたか
- 残業や増産があったか
- どの動作で痛みが出るか
- 職場へいつ報告したか
労災に当たるか自分だけで決めず、会社、医師、労働基準監督署などへ相談する必要がある。
現場でできる負担を減らす工夫
腱鞘炎を完全に防げる方法ではないが、手へ余計な負担をかけないため、自分なら次の点を意識する。
工具を必要以上に強く握らない
工具を落とさないよう強く握り続けていないか確認する。
手首を曲げたまま力を入れない
できるだけ自然な角度で作業できないか考える。作業台や部品の位置に問題がある場合は担当者へ相談する。
指だけで作業しない
可能な作業では、指先だけに力を集中させず、手のひらや腕全体を使えないか確認する。
休憩中まで手を酷使しない
休憩時間にスマートフォンを長時間操作せず、仕事で使った手を休ませる。
痛みが出た日を記録する
痛みの強さ、作業内容、残業時間を簡単に残す。職場や病院でも説明しやすくなる。
作業方法を勝手に変更すると品質や安全へ影響するため、必ず指導者や担当者へ確認してください。
痛みを隠して働くほうが迷惑になることもある
期間工へ入ると、「休まず働かないといけない」「痛いと言ったら根性がないと思われる」と考えてしまうことがある。
でも、今考えると、早めに言ったほうがよかった。
- 軽い段階で相談すれば、持ち方や作業姿勢を確認できたかもしれない
- 一時的に負担の少ない作業へ変更できたかもしれない
- 毎日カレーを食べて、カレー好きだと思われるところまでは悪化しなかったかもしれない
痛みを隠して突然作業できなくなるより、早めに伝えて対応するほうが、本人にも職場にもいい。
期間工で大事なのは、1日だけ無理してラインへ立つことではない。契約期間を安定して働くことだ。
まとめ|箸が使えなくなる前に相談してほしい
期間工の仕事では、部品を持つ、工具を握る、指でつまむ、手首をひねるといった動作を何度も繰り返す。
一つひとつは軽い作業でも、同じ場所を使い続ければ、手や指へ負担がたまる。
自分は腱鞘炎になり、箸が使えなくなった。そのため毎日カレーを食べ、周りからはカレー好きだと思われていた。
今なら笑って話せる。でも、当時は食事にも困るほど手が痛かった。
最初は、ほんの少しの違和感だった
- 工具を握ると痛い
- 指に力が入らない
- 部品をつまみにくい
- 箸が使えない
箸が使えなくなるまで耐える必要はない
- 早めに職場へ伝える
- 病院で確認してもらう
- 同じ作業を続けていいか相談する